【桜随筆013】朝陽が照らす一本桜

青空背景で畑の奥に咲く一本桜の風景。この写真が撮りたくて、つぼみの頃から何度も通いました。

平成22年(2010年)5月1日6:27撮影。早朝で太陽の位置が低く、真横から光があたる、いわゆる斜光での撮影というものです。この時間帯の光はオレンジ色で、桜を鮮やかに染め上げてくれます。また、この写真では右側から光が当たっていますが、それによって、あらゆる凹凸の左側に影が生まれ、桜に立体感が出ました。この頃は風景写真とは影をどう演出するかが鍵になるということに気が付いてきた時期でした。

いわき市の山間部、三和町下三坂地区に咲く、エドヒガンザクラ。名称は「下三坂の種蒔き桜」

樹齢200年以上といわれている市指定天然記念物ですが、アマチュアカメラマンを除けば、一般的にはほとんど知られていない桜ではないでしょうか。

この絵に描いたようなロケーションに虜になってしまいました。

同日午後4時にもう一度見に行きました。夢中で撮影していると、腰の曲がったあばあちゃんが、手押し車を押して畑仕事にやってきました。

「今日は最高だねえ。八分咲きの今が紅色が強くて一番綺麗だよ。いい写真撮れた?」

種蒔き桜と呼ばれている通り、この辺りではこの桜が咲くと畑に種を蒔くのだそうです。

桜の下にはこの地区の共同墓地があります。墓守桜という考え方があることも知りました。ふるさとの原風景。お墓が写真に写ったっていいじゃいないか。そう思いました。ただ美しい風景というだけではなく、地域とともに咲いてきた歴史ある古木。桜には人々の思いが込められている。それを記録する上で、墓守桜ならお墓も撮らせていただく。それまで自分の中であいまいだった桜写真の捉え方ですが、ひとつの答えが出たような気分でした。

こちらの写真は同日16:05撮影。カメラの設定は同じですが、1枚目の写真6:27撮影と比較してみると、時間帯による太陽の位置の違いによって、光の照らす角度が変わり、さらに光の色の違いによって桜の雰囲気が大きく変わることがわかります。太陽が左後ろにあるため、桜全体の影がほとんどなくなってしまったことから、1枚目の写真よりも立体感が減りました。また光の色も白く、桜の色合いも白く写りました。

写真は好みがあるので、それが答えでないことはわかってますが、桜を主役の被写体として捉えた時に、やはり情景的な風景は斜光での撮影といえます。つまり、多くのカメラマンが朝陽が照らす桜を狙う理由はここにあったのです。

茨城県の桜

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