【つくば市】筑波山の山桜
平成31年4月撮影
茨城県つくば市 筑波山
「筑波ねの みねより花に あけそめて 桜川かと いろになかるる」
宗祇は筑波山に登山してこの句を詠みました。
奈良時代、筑波山の存在感は万葉集にある通りで、その先にある桜川が有名になるのは必然だったのかもしれません。
遠くの山に咲く天然の山桜を愛でる「遠山桜(とおやまざくら)」という観桜。 これぞ花見の原点であり、茨城県の山は里に近く、古くから田植えや種まき時期の目安にもなってきたと考えられます。
関東平野の北端である筑波山とそこから続く筑波連山。これら低山に咲くヤマザクラの風景こそが、茨城県が誇る最上の桜風景かもしれません。 山深い吉野山とは違う、人々の暮らしのすぐ目の前にあるごく当たり前の風景です。 昔から人々は山に咲くこの遠山桜を観て春の畑作業をはじめたのでしょう。山の神に祈り、神社にもヤマザクラを植える。
北条米(ほうじょうまい)
北条米はつくば市北条、筑波、田井、小田の4地域で生産された米のみに冠することのできるブランド名。水田がある地域は、筑波山南西山麓の桜川東岸に位置する「桜川低地」で、筑波山由来のミネラル分を多く含んだ水が米の旨味を引き出し甘みをもたらすといいます。北条米は戦前、皇室献上米として既に米穀関係者に知られていました。
万葉の時代から信仰されてきた筑波山。 そして麓で作られるお米。
まさに、稲(サ)の神様が依り代とする座(クラ)。そして眼下に流れる桜川。
平成31年4月撮影
平成31年4月撮影
平成31年4月撮影
平成31年4月撮影
手前の桜並木は燧ヶ池のソメイヨシノ。
筑波山の下の方を彩る桜も参道のソメイヨシノです。
平成31年4月撮影
平成31年4月撮影
令和2年3月撮影
令和2年には非常に珍しい雪化粧の中の遠山桜を観ることができました。
令和2年3月撮影
令和2年3月撮影
令和2年4月撮影
麓を走るつくばりんりんロードは様々な桜で彩られます。
令和2年4月撮影
平成30年4月撮影
写真提供:上野雅洋さん(つくば市)
足柄の坂から東にある諸国(関東諸国)の男女は、春の花が咲く時期、秋の木の葉が色づく時節になると、手をとりあって連れだち、食べ物や飲み物を持って、馬に乗ったり歩いたりしてこの山に登り、終日楽しく遊び過ごす。
『常陸国風土記』四 筑波郡(二)
福慈の山(富士山)はいつも雪が降り積っていて人は登ることができず、一方この筑波の岳は人々が往き集い、歌ったり踊ったりし、また食べたり飲んだりして、今に至るまでそれが絶えないのである。
『常陸国風土記』三 筑波郡(一)
引用:『常陸国風土記 全訳注』(秋本吉徳・平成13年)
一年のうちの特定の場に男女が集まり、飲食歌舞に興じる行事で本来は春秋の農耕儀礼としての山見・花見という子祝行事としてあったもので、それに種々の娯楽的要素が付加されたものであるという。春秋二季が選ばれているところからすると、春、山から田に神を迎え、秋にふたたび山に返すという農村の神祭りのあり方とも密接にかかわっているようである。
引用:『常陸国風土記 全訳注』(秋本吉徳・平成13年)」
上記は今から1300年前に編さんされた『常陸国風土記』の一文を現代語に訳されたものとその解説です。「足柄の坂から東にある諸国」とはつまり富士山から東の関東平野のことです。
また、この常陸国風土記の花見の記述が日本最古の(民間人による)花見の記録のようです。
花見は奈良時代の『常陸風土記』に記述があるのが始まりといわれる。
平安時代には宮廷の季節の移り変わりの節目の行事(桜狩り)となり、鎌倉時代には桜の名所が急増し武家の間に広まった。
引用:『会報 河川文化 第81号』(公益社団法人 日本河川協会・平成30年)
このことは水戸桜川千本桜プロジェクトの稲葉先生から教えていただきました。
当ウェブサイトの副題「常陸国一千三百年の桜史」の根拠はここにあります。
平成30年4月撮影
写真提供:上野雅洋さん(つくば市)
遠山桜(とおやまざくら)という観桜があることも、水戸桜川千本桜プロジェクトで学びました。
遠くの山のヤマザクラを遠望で楽しむ手法です。
このヤマザクラの絶景をみれば全て納得。
西の富士、東の筑波といわれ古くから信仰と観光の対象だった筑波山。
日本最古の花見(民間人による)の記録は筑波山にあった。
このヤマザクラ絶景が北に続く筑波連山でも同様に見られることも重要だと感じます。
成沢の山桜、加波山の山桜、雨引山の山桜と、遠山桜の展望地を挙げればキリがありません。
奈良時代、平安時代といえばまだ人々が暮らすエリアには桜はないか、もしくはごく一部であったことと思います。
花を愛でるとなると山に咲く桜が当たり前の時代です。
関東平野の人々が、ヤマザクラが咲き誇る低山の春を求めたことは必然でしょう。
その筑波連山の北端の盆地には「桜川」があり、そしてその先には下野国との国境を成す、富谷山、雨巻山、高峯山があるのです。
平成30年4月撮影
写真提供:上野雅洋さん(つくば市)
平成30年4月撮影
写真提供:上野雅洋さん(つくば市)
上野さんは、茨城県の野鳥や風景を撮影されているカメラマンです。
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