【桜随筆022】美野里の桜
平成21年(2009年)いわき市から撮り始めた桜風景。平成23年には本格的に福島県全域の桜巡りをはじめました。 そして平成24年、仕事の転勤によって8年ぶりに茨城県に帰ってきました。茨城県でも休日に風景写真を撮り歩くことが楽しみになりました。茨城県の桜については情報を調べたことがなかったので、全容は把握できていませんでした。そこでまずは地元である小美玉市、旧美野里町エリアの桜を撮影してみたいと思いました。子供の頃から知っている桜並木です。前夜の雨から一転して快晴となった4月15日、朝日が照らす満開の桜ほど美しい情景はありません。霧も発生してくれて、この日の撮影は特別なものになりました。
またもうひとつこの日は特別なことがありました。はじめて自分で購入した一眼レフカメラがデビューの日となったのです。Canon EOS 60D。 それまでカメラは主にコンパクトデジカメを使ってきました。平成21年 Panasonic LUMIXから使い始めて、撮れば撮るほど風景写真にのめり込んでいきました。突き詰めていくと写真とは、撮影者のイメージをより細かく反映させることが大切であり、マニュアル操作によってダイレクトに絵の変化が楽しめるという部分で、一眼レフカメラに行きつくことは自然な流れだと感じています。
撮影者のイメージとは、こんな写真が撮りたいという想像です。風景写真は季節、天候、時間帯によって大きく変化します。この日は前夜が雨でした。翌日の天気予報は晴れ、朝は濃霧注意報で霧が発生する確率は高い。その上で狙っていたのは小美玉市で一番有名な桜並木名所「大曲の桜並木」です。この並木は南北に走る国道6号線沿いです。ということは北側か南側から狙えば東側真横から光がさして斜光となり、桜に立体感が生まれる。西側から狙えば花びらに光が透過して幻想的な絵になるかもしれない。東から狙えば青空背景で撮れそうだ。このような具合で天候や時間帯、狙う方角によって光のあたる被写体の変化など、どんな写真になるかイメージを膨らませます。そして当日はそのイメージ通りの写真に近づけるためにシャッタースピードや絞り値、ホワイトバランスや感度などを手動のマニュアル操作で容易にこなしていける、それが一眼レフカメラの面白さ、醍醐味だと思います。 思ったように容易に操作をこなすといっても、一眼レフカメラがはじめての場合はそうもいかないでしょう。自分の場合はNikon COOLPIX P6000によってマニュアル操作の意味を学ぶことができたこと、そして平成23年に写真の師匠から一眼レフカメラ Canon EOS 30Dを譲り受けて、約1年間メインカメラとして使い倒すことで操作の経験を積むことができたことが大きいです。30Dの後継機でもある60Dを購入したのも、レンズがそのまま使えることはもちろんですが、操作ダイヤルやメニュー表示の構成が同じだからという理由です。どのような気象条件のときにどのような設定で撮るとどのような写真になるのか。これはとことん撮影して経験を積むことが最短ルートです。愛機を託してくださった師匠に感謝しております。
5:49 県立中央高校の桜
記念すべきEOS 60Dデビューショット。朝陽はあっという間に昇ってしまうので、カメラを即座に操作できなければチャンスを逃してしまいます。大曲の桜並木に向かう途中。側道から3分で撮影。
6:00 美野里中学校の桜
自宅から向かうと大曲の桜並木手前の中学校。朝陽がもったいなくて立ち寄り、こちらも取り急ぎ3分で撮影。
6:21 大曲の桜並木
目的の桜並木に到着。風景写真はできる限り事前にシミュレーションしておくことが大切。被写体が絵になる方向。時間帯による太陽の位置と光のさす方向、太陽を遮る障害物の有無など。特に朝陽や夕陽で撮影する場合は現場で迷っている時間はありません。事前に現場の下見ができれば最高。難しければgoogle ストリートビューで調べておくと便利。この時は霧の中朝陽が差し込む光芒を撮影することができました。
6:24 大曲の桜並木
反対側を左からの斜光で撮影。望遠レンズで奥行きの圧縮効果を出してます。
11:14 池花池の桜
風がなければ水面に桜が写ったはずですが、しばらく待っても止んでくれませんでした。風景写真では風も重要な要素です。風があると桜の花びらが揺れてぶれてしまうので、シャッタースピードを意識することになります。逆に風で揺れる花びらや波紋が広がる水面を撮影して、あえて「動」を表現することもあります。
旧美野里町の桜。やはり自分が生まれ育った町の桜は特別です。この感動は福島県で桜を撮り続けてきた自分にとって新しい感覚でした。福島県の桜名所とその地域の人々が、いかに地元の桜に誇りを持っているか。それを自分の町の桜で強く実感したのです。新しいカメラと地元の桜風景。撮影の計画を立てている時から至福の時間ははじまっておりました。
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