【龍ケ崎市】般若院の枝垂れ桜

平成26年3月撮影

茨城県龍ケ崎市 般若院


樹齢500年を誇るエドヒガンザクラで県指定天然記念物。

天元元年(978年)に道珍法師によって創建された般若院。当初は龍ケ崎市貝原塚町にありましたが、大永四年(1525年)に現在の場所に移されました。ご住職によると、このシダレザクラはお寺が現在地に移転した際に植えられたものとのこと。ご住職が子供の頃には樹齢450年と伝わっていたそうなので、樹齢500年としても間違いはなさそうです。 

昭和30年撮影 写真提供:般若院

ご住職に御本堂に案内していただき、昭和30年に撮影されたというシダレザクラの貴重な写真を見せていただきました。その写真には桜の前に池が写っています。昔はその池に舟を浮かべてお花見を楽しんだとのことです。当時は今よりも枝ぶりが良く、もっと樹観も素晴らしかったそうです。池のあたりから手前は現在墓地ですが、意外にもこの頃お墓は無かったとのことです。茨城県内のシダレザクラとしてはまぎれもなく最古木であり、今なお樹勢が豊かな至宝の桜です。  

『櫻の日本』(佐藤太平・昭和10年)より 昭和初期のシダレザクラ


茨城県においてシダレザクラはお寺に多く存在しています。そして神社にはヤマザクラの古木が多いのも特徴です。これは、仏教と神道の区別、信仰の違いによる桜の植え分けに他なりません。平安時代から京都御所紫宸殿(南殿)前の左近の桜は奈良吉野山のヤマザクラでした。このことからも天皇、そして神道を司る神社においてヤマザクラの御神木が植えられてきたのは必然といえます。

お寺、いわゆる仏教ではヤマザクラと対比して特徴のあるシダレザクラが植えられてきたのです。般若院においても、この約束事ともいえる植え分けの継承を見ることができます。 

エドヒガンザクラ。もちろんその名の通り彼岸に咲くから寺院に植えるということがもっとも大きな理由です。天蓋(てんがい)、瓔珞(ようらく)に模して植えられるともいわれています。天蓋は天井から吊るす装飾具で、「仏の徳が自ずから外に現れ出たそのもの」とされています。シダレザクラはブッダが悟りを開いた時に、天地が光り輝き、天上から降り注いだ「奇瑞の花」に例えられています。つまり、仏の徳そのものが天蓋であり、天蓋=奇瑞の花。天蓋に用いられる瓔珞は菩薩の首飾りとしても用いられています。茨城県の古木を見て回ると、高確率でシダレザクラは寺院にあります。このような歴史は樹齢数百年の古木を相対的に見ていけば必然と見えてきます。 

参考:水戸桜川千本桜プロジェクト


墓守桜(はかもりのさくら)としての存在感。日本では古くからお墓に桜が植えられてきました。墓地や墓石の管理の問題で近年伐採される例も少なくありません。大切な先祖が眠る墓地に桜という日本人ならではの美徳と慈しみの心。桜は生と死の両面が浮かび上がる、一種独特な花ではないでしょうか。 墓守桜は稲作の苗代時期を教えてくれる目安としても役立ってきました。「種蒔き桜」「苗代桜」という言葉がありますが、それらは墓守桜であることが多いです。


『茨城懸巨樹老木誌・下巻』(関右馬允・昭和15年)には、約100年前に撮影された般若院のしだれ桜の写真が掲載されています。当時の樹勢とほぼ変わらない状態で存在している現在のシダレザクラ。これは桜の南側の大きな本堂と北側の墓地に囲まれた環境から、強風などから守られていることもひとつの理由だとご住職。 また、専門樹木医により適切な診断と手当がなされ、枝を守る支柱の設置も大きな理由といえます。まさに桜守によって維持されているのです。 

平成25年3月撮影

親子桜として。近くに植えられている子孫樹。(写真右手)

平成25年3月撮影

紅色が際立つ八分咲きの花。

平成25年3月撮影

平成25年3月撮影

朝陽が照らす至高の時間。

平成25年3月撮影

エドヒガン特有の小さな花。

平成26年3月撮影

幽玄に浮かび上がる夜桜の美。

平成26年3月撮影

平成26年3月撮影

平成26年3月撮影

平成26年3月撮影

平成26年3月撮影

平成26年3月撮影

平成26年3月撮影

平成26年3月撮影

平成26年3月撮影

平成27年3月撮影

平成27年3月撮影

平成27年4月撮影

平成27年4月撮影

平成27年4月撮影

平成27年4月撮影

平成27年4月撮影

平成27年4月撮影

平成27年4月撮影

平成27年4月撮影

平成30年6月撮影

平成31年2月撮影

平成31年2月撮影

親子桜。これほどまでそっくりに育つものかと驚きます。こちらの成長も楽しみです。

平成31年2月撮影

平成31年3月撮影

写真提供:安齋智宏さん(日立市)

平成31年3月撮影

写真提供:上野雅洋さん

親子桜の絶妙な構図。

平成31年3月撮影

平成31年3月撮影

平成31年3月撮影

星空とシダレザクラ。

令和2年3月撮影

写真提供:冨山幸治さん(龍ケ崎市)


※当サイト掲載文章及び写真の無断転載、コピーを禁止します。 ※当ホ-ムペ-ジにおいて提供する情報の全体又はそれを構成する個々の文章、資料、画像、音声等には著作権があります。許可なく複写、複製、転載、頒布等の二次利用を禁止します。また、許可を得ての転載の際に、内容を変更、加筆修正等を行うことも同様に禁止いたします。






茨城県の桜

常陸国一千三百年の桜史と平成の桜の記録 茨城一本桜番付 平成春場所の発表